Canvaの市場進出により、ノンデザイナーさんによる印刷会社への入稿がとても増えました。
その傍ら、印刷に携わる方が困っているのをSNSで見かけることが、とっても多い!
Canvaで中小の商いを応援する私としては、関わる方に知ってもらうことが必要だと感じています…
たった5つの不備で、Canvaや商いを頑張っているあなたの評価が下がってしまうのは、とても残念です。
人や経営者としても、『いろんな業界には作法があるからこそプロがいる』ことを知っていれば、事前確認を怠らず、相手を思い遣って仕事に取り組めるのではないでしょうか。
Canvaユーザーに特に多い5つを印刷会社の方が教えてくれました!
ぜひ、『知らなかった』を5つチェックしてみてください。
※本記事では、テンプレートを使わない白紙状態から作ったドキュメントも、ノンデザイナーの方がわかりやすいように「テンプレート」と呼びます。
◆この記事が役立つ人
・デザイン初心者、デザインを学ぶ学生
・企業のひとり広報、ひとり販促部
・自前で販促する個人事業主
Contents
不備❶塗り足しがない!
『塗り足し』とは、テンプレートやドキュメントのサイズより、縦上下、横左右に3mmずつ『背景』や『身切れる画像やオブジェクト』を『足しておく』こと。
印刷では大きな紙に、いろんな印刷物を『面付け』して印刷します。
面付けという作業は、一つの紙から沢山印刷できるように、紙からの取り都合を考えて複数の印刷物をレイアウトすることをいいます。
なので、刷り上がった後にトリムマークに合わせて裁断する必要があります。
その時、裁断する機械の精度として最大3mmずれる可能性がでてきます。
ずれた時に、紙の白地がでてしまわないよう『塗り足し』という作業が必要なのです。

Canvaの塗り足しの確認の仕方

テンプレートを選んだそのままだと、『塗り足し領域』は非表示のままです。
表示させるには…
パソコンは左上「ファイル」、スマホは上中央「・・・」より「 設定>塗り足し領域を表示する 」で表示されます。
※図はパソコン版です
不備❷ドキュメントのサイズの比率が合わない

Canvaはオーストラリア発のアプリです。
そのため、テンプレートの幅や高さの単位は、もともと欧米諸国で用いられる『inch(in)』表記がメインでした。
※1インチは約2.54センチメートルに相当し、記号は「in」または「”」(ダブルプライム)です。
Canva Japanが発足して『cm』単位のテンプレートが増えて、現在Canva内は様々な単位が入り乱れています。
また、SNSやWebで使う画像の単位は『px』です。
これらの単位の違いを理解していないと、誤ったテンプレートを使ってしまう危険性があります。
日本で主に使われる紙のA判・B判(A4やB5などの紙の規格サイズ)と、実際に作ったサイズの比率が合わない現象が、入稿時に発覚しているとのこと。
三つ折りリーフレットなど「in」単位や欧米規格サイズで作られているものが多いです。
確認せずに、A4三つ折りだと勘違いしたまま、内容を流し込んで入稿してしまうと「実際に作ったサイズの比率が合わない」現象が起きてしまいます。
必ず、テンプレートを選んだら、単位が「cm」かチェックしてみてください。
自分で印刷物データを作る時は、B規格の場合は「カスタム」から、A規格は検索窓から検索して、真っ白のテンプレートから作ってくださいね。
不備❸解像度が足りていない
これは主に2つの要因があるので、それぞれ説明していきます。
SNSやWeb用に作った画像を印刷に出している
印刷会社さんの嘆きの一つに「pxデータで入稿してくるCanvaユーザーがいる」とのこと。
なぜ起きてしまうのかは「SNSやWeb用デザインをそのまま印刷に出している」のではと推察しています。
・気に入ったテンプレートの単位が「px」だった
・Instagramの投稿を印刷したい
といった内容?!
その場合はリサイズが必要です。
手っ取り早く解決したいのであれば、Canvaの有料版に切り替えて『マジックリサイズ』を使うことをお薦めします。
Canvaは賢くできていて(笑)コピー&ペーストでのリサイズが簡単にできません。
ただし、リサイズできたとしても、次の②の問題が発生する可能性があります。

Canvaで使っている写真素材の解像度が低い

このケースはCanvaの画像素材の解像度が足りないことを知らずに入稿してしまったパターンです。
Canvaの静止画像素材は大きく分けて、『ベクター画像』または『ラスター画像』。
選んだ素材が、テンプレート配置後に選択すると「カラーチップ」がツールバーにでてくる素材は『ベクター画像』です。
このベクター画像には解像度は関係ありません。色も変えられる無敵素材です。
解像度問題が出てくるCanvaの画像は、「色が変えられない素材」または「写真」。
選んだ素材が、テンプレート配置後に選択すると「背景除去」がツールバーにでてくる時は解像度に注意が必要です。
このような素材を『ラスター画像』といいます。
ラスター画像は単色の小さな正方形(ドット)で画像を表現しています。
そのドットの粒の細粗の度合いを解像度といいます。
解像度(単位はdpi)は、Webや印刷の世界で「視覚的に滑らかに見える画像の粒の粗さ」でそれぞれ違います。
原寸※1表示の時、Webは72dpi、印刷は350dpi(媒体※2による)です。
※1情報を伝達するための手段や道具 ※2実物どおりの寸法
媒体に応じた解像度が確保できていない時、つまり解像度が低いとドットの粒が大きく見えてくるので画像がカクカクしたように見えるのです。
残念ながらデザイン中にCanvaの画像の解像度を知る術はありません。
…が、Canvaの印刷の入稿アシスタントで印刷の解像度が足りているか知ることができます!
詳しくは、目次5の「初心者の初入稿は、Canvaで印刷することをお薦めする!」をご覧ください。

不備❹RGBカラーで入稿
無料のCanvaユーザーが度々起こす、印刷物のRGBデータ入稿。
PDF(印刷)のダウンロード時においてカラープロファイル※は無料版だとRGBしか選べません。
※色の一貫性を確保するために使用するデータ情報
カラープロファイルの差は
・RGB→モニターなど光で表現される色域
・CMYK→印刷のインク4色で表現される色域
白で考えるとわかりやすいのですが
・RGB→光の白、暗闇の黒
・CMYK→紙の白、インクの黒
つまり、RGBのほうが遥かに色彩と諧調豊かで、CMYKには再現できません。

みなさんが見ているこのWebサイトのカラープロファイルは、RGBカラー環境です。
Canvaのカラーの検索窓に出てくる『「青」または「#00c4cc」を検索』の#から始まるのはHEXカラーコード。
WebのRGBカラー指定の時に使うコードです。
つまり、CanvaのデザインはRGBのカラー領域で作っているということ。
気をつけなければいけないのは
画面上見えている鮮やかな色は印刷に対応したCMYKに変換すると色がくすみます。
それを念頭に、鮮やかすぎる右上の方のカラーは選択しないことが無難です。
また、仕上がりイメージの齟齬がないように、印刷前にどれくらいくすむか、印刷用PDF(CMYK)をダウンロードしてみてください。
そうCanvaの有料版に切り替えるか迷ってる、ターニングポイントの指標のひとつ。
PDF(CMYK)ダウンロードがしたいかです。
『印刷したい』と、思った時点でアップグレードを一度考えてみてはいかがでしょうか。
月契約も可能だし、無料トライアルもあります。

さて、RGBで入稿してはいけない最大の理由は、印刷方法にあります。
普段、インクジェットプリンターや、レーザープリンターで印刷していると想像がつかないと思います。
印刷会社で印刷する時は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4つの版に色を分解します。
その版を重ねることでフルカラーを表現します。
ゆえに、印刷会社の方はRGB(Red,Green,Blue)入稿だと4つの版に分けられなくて困っているのです!!
表現できる色の幅も異なり、印刷会社側が勝手にRGBをCMYKに色変換して印刷は、トラブルの原因になるのでできません。

Canvaの印刷用PDF(CMYK)でも、「黒」の問題が必ず残る
⚠️CanvaのRGB環境で作ったCMYKのPDFデータで印刷用の色の再現はできません。
上記のように、できないことを擬似的に行なっているので、「黒のインクしか使わない」ことができません。
Canvaで黒または近似色を作った時、CMYKに変換すると総インクの使用量が多くなる問題が出てしまうのです。
そうすると何が起こるか…
インクの濃度が濃すぎて乾燥できず、裏移りや印刷物の汚れの原因となります。
版ズレが生じた場合、細かい文字や細い線がにじんだように見えて可読性が下がります。
それを防ぐためにはデータの修正が必要になり、初心者がCanva上だけで完結することは不可能です。
また、安価に印刷を請け負う印刷会社さんが、無償で対応する範囲を超える仕様です。
Canvaで作ったデータの印刷は、Canvaで行うか、Canvaのデータを受け入れを表明している印刷会社さんにお願いしましょう。
知りたい方向け:Canvaの黒を大検証
CanvaのRGB環境で、擬似的にCMYKの黒やリッチブラックを作ってCMYKのPDFでダウンロードして検証してみました。 (Illustratorで確認)
CMYK | RGB(CMYから擬似変換) | |
黒 | K100 | ♯231815 |
リッチブラック | C40 M40 Y40 K100 | ♯0e0000 |

四角の黒いオブジェクトを触ると、K100(黒100%)の表示。
一見成功したかのようでしたが、K100になっているのは、オブジェクトの上にかぶさっている謎の透明度0%オブジェクトでした。 (3つの四角ともK100の透明オブジェクトが上に乗っている状態)
これをどけて下の色を確認してみます。



それぞれ、謎の透明オブジェクトの下の、Canva上で指定したカラーはまったく異なる掛け合わせに。
印刷会社によりますが、一般的なCMYKの総インキ量は300%〜350%以内が目安です。
※印刷会社さんが総インキ量の値を調整してくださる場合もあります。


不備❺フォントが文字化けしている!
結論、印刷をしたい時点でCanva Proにアップグレードせよ。
先に結論から言うと、印刷をしたい時点でCanva Proにアップグレードしてください。
Canvaだけで印刷までを完結したいのであれば、Canva Proの印刷用PDFのオプション「フラット化」が初心者には安全です。
※フラット化は、アウトライン化ではなく文字をラスター画像にするラスタライズ化です。


知りたい人向け:CanvaのPDFが文字化けしてしまう理由
みなさんは、フォントがパソコンやスマホで正しく表示されるのは、デバイスにインストールされているからということをご存知でしょうか?
フォントがない環境でPDFを開いたり印刷すると、代替フォントに置き換えられて、レイアウトが崩れてしまいます。
プロのデザイナーは、何万もするフォントのライセンスを購入してデザインに使っています。
Canvaには、プロが使うレベルからフリーフォントまで、豊富な数のフォントを無料もしくは定額で利用することが可能です。
その中に、フォントメーカーが埋め込みを許可していないフォントは、PDFに埋め込めないという事象が発生するのです。
それを防ぐ方法は、①フォントをインストールする ②アウトライン化する この2つの方法です。
①はご自身が購入したフォントをCanvaにインストールする方法です。
※注!ダウンロードしたPDFには文字情報が埋め込まれているかはCanvaで未検証です。
②は、フォントをベクター画像にする方法です。Adobe Illustratorなど専用のソフトが必要です。
Canvaにはフォントをアウトラインできませんが、Canva Proの印刷用PDFのオプションに「フラット化」があります。
①②はご自身がフォントのライセンスを持っていることが前提です。
商用利用する場合、フリーフォントによっては使用不可な場合があるので注意しましょう。
ちなみに、Web上では、フォントを持っていなくても、「Web Fonts」という仕組みを使っているので正しく表示されています。
ブラウザがインターネットからフォントをダウンロードして利用する、または、サーバーからフォントを直接読み取って一時的にサイト上で表示させているからです。
初心者の初入稿は、Canvaで印刷することをお薦めする!
…でもやっぱりわからない、心配…という方は、Canvaでそのまま印刷までを行うのが一番安全です。
※Canvaで印刷した場合も文字化けして印刷されたという報告がありました。
Canva Proの印刷用PDFのオプション「フラット化」は必須なようです。
無料版でもCanvaでは印刷できるように改善されるとよいですね…
なぜかって?
Canvaは入稿アシスタント機能があり、データのチェックをWeb上でしてくれるからです!
知らなかったり、自分が忘れがちなチェックポイントを指摘してくれる優れもの。
また、無料版ユーザーにも嬉しいCMYK変換のトラブルが発生しません。
(Canva側で、CMYKに変換しているので色には注意です)
ただし、確認用のPDFはトリムマークは自動でついていますが、カラー領域はRGBです。
これをダウンロードして他の印刷会社で…はやめてくださいね。
①パソコンは右上の『共有』、スマホは右上の『[→』から『Canvaで印刷をする』を選択
②印刷メニューを選びます
③入稿アシスタントに従ってデータを修正
④PDFをダウンロードして確認
⑤カートに追加して支払い
ただしCanvaの印刷は、一般に想像するオフセット印刷ではなくオンデマンド印刷だと推測しています。
(Canvaで印刷したことがないもので)
メリット
・クオリティはそこそこ
・短納期
・小ロット対応
・印刷すると、社会貢献ができる!(詳細はナイショです)
つまりは、高級な家庭用デジタルプリンターってことですね。
デメリットとしては
・割高になる
・オフセット印刷よりクオリティが低くなる
・紙の種類があまりない
・作れるサイズや種類が限られる
最後に
私がインハウスデザイナーだった頃、スタッフにAdobe Illustratorの使い方を教えたり、会社のレーザープリンターで印刷した販促物を地方の店舗に送ったりしていました。
Adobeのソフトはお店のスタッフが使うには難しすぎるし、ちょと場所や日付を変えて、その地方に合わせたいというパターンもあります。
少しの修正に毎回デザイナーに高額な修正料を払うことができるのは、一部の企業だけです。
Canvaがあれば、自分たちで印刷だって可能です!
しかし、デザイン界隈では初心者によるデータ不備が嘆かれ、Canvaの印象が悪いな…と感じて悲しくなることがあります。
なので、私としては「一回Canvaで印刷して、どんなことが必要なのか知る」ことをおすすめします!
この大切な5つを忘れずに、Canvaでの制作を楽しんでいただければと思います。